名手・蛯名正義が今年わずか5勝と大不振

 
”天才”武豊騎手とともに1987年にデビューして以来、常に互いの比較をされながらもここまでJRA歴代4位となる通算2458勝を挙げている蛯名正義。「西の豊」、「東の蛯名」として長年に渡って一時代を築き上げた言わずと知れたトップジョッキーだ。
 
しかし、今年はもうすぐ4月になろうとしているにも関わらず現時点でわずか5勝と元気がない。重賞は1月のAJCCをタンタアレグリアで制したものの2月11日を最後に勝利からは遠ざかり、もう1ヶ月以上も勝てていない。例年の蛯名騎手からすれば想像できない事態で、特に怪我をしている様子もない。これは蛯名騎手の周囲に何か異変が起きているとしか考えられない。
 
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かつてはバブルガムフェローやエルコンドルパサー、エアジハード、マンハッタンカフェといった幾多の名馬の背中を知り、2010年にはアパパネで牝馬三冠制覇を果たすなど大舞台に強い”必殺仕事人”として絶対的な地位を確立してきた蛯名騎手。人気の武豊騎手とは逆に地味なイメージの蛯名騎手だが、ここまで積み上げた実績は武豊騎手と比べても見劣りはしない。
昨年もディーマジェスティで皐月賞を制するなど健在ぶりをアピールしていたが、今年は外国人騎手や後輩騎手の勢いに太刀打ちできず、現時点で47位と低迷している。
 
同期の武豊騎手がかなりの”超人”であるため、蛯名騎手も「まだまだ全然やれる」という印象があったが、一般的に考えれば、48歳という年齢にも関わらず第一線で活躍していることのほうが珍しい。いつ限界がきてもおかしくないだけに勝ち鞍が激減するのもしょうがないのかもしれない。
 

”お尻トントンフォーム”に原因か

 
もはや蛯名騎手の代名詞ともなっている「トントンフォーム」。ここ数年ずっと続けている特殊な騎乗フォームだが、馬の背中にトントンとお尻をつけて追うフォームは一見、大きなアクションとともに馬の推進力を引き起こしているようにも見える。一方で同じ騎手仲間や調教師からは賛否両論が出ているのも確か。
特に、同じベテランの横山典弘騎手や藤田伸二元騎手は「馬に負担がかかるだけ」とトントンフォームを真っ向から否定しており、ある調教師は「蛯名が乗ると馬が壊れる」と嘆く陣営もあるようだが・・・。
 
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素人目からすれば、この「トントンフォーム」は馬の怪我のリスクを上げるだけではなく、馬上で激しく動く騎手の運動量も相当要しているように感じる。それが余計に蛯名騎手自身の負担に繋がり、さらには有力馬が回って来なくなった原因なのではないだろうか。
 

エージェント制度をやめたことでさらに追い討ち

 
先日、JRAがエージェント制度に改革を加えようとしていることがわかった。その骨子は、専門紙トラックマンの兼業を禁じるもので、新たな規約でエージェントになった人は馬券の購入に加えて予想も禁止となる模様だ。これが実施されればマスコミやメディアで予想を公開しているひとはどちらかを辞めなければいけなくなる。
 
そしてこの動きに先んじて自分から手を打ったのが蛯名騎手だった。3月9日付けの騎乗依頼仲介者一覧から蛯名騎手のエージェント名が空欄となり、現在は自ら営業をしなくてはいけない状況。ましてや外国人騎手や有能な若手が台頭している中で、百戦錬磨のベテランといえども今まで通り質の良い馬を集めるのはかなり酷な気がする。
 
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さらに蛯名騎手がエージェント制度から身を引いた翌週には、同じ関東のベテラン横山典弘騎手もエージェント契約を解除した模様。長年に渡ってトップに君臨してきた二人のベテラン騎手だが、これからGⅠ級の馬に巡り合うことはできるのだろうか。今後は最年長の木幡初広騎手や柴田善臣騎手のように騎乗数や馬質を抑えながらも身体の負担を軽減して長く乗ることを第一に考えるべきなのかもしれない。
 

まとめ

 
2月11日を最後に勝ち星から遠ざかっている蛯名騎手だが、今週こそは最低でも1勝は挙げたいところ。2日間ともに中山で騎乗する予定で、土曜メインのダービー卿CTには2014年の2歳女王ショウナンアデラで参戦する。人馬ともにここで復活Vを飾ってもらいたいものだ。

蛯名騎手は幾多のビッグレースを手にしているが、ダービー制覇はまだ成し遂げていない。このまま引退するには惜しく、まだまだ外国人騎手や若手騎手と渡り合うだけの技術があるのは確か。競馬が一層盛り上がりを見せるこの時期を機にここから怒涛の快進撃を期待したい。

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